審査員特別賞
彼岸の頃
自宅から車で約30分、田園地帯が広がる一角に父母が眠るお墓がある。
最近は樹木葬や散骨等、墓を持たない人たちも一部見受けられるが、両親や先祖が眠るお墓をお参りする事は日本の良き習慣であり、大切な文化である。
ご先祖様から両親、そして自分自身へと続いている絆を再認識し、両親の恩を忘れず感謝の気持ちを持ち続けていきたい。
秋になるとお墓の周りには彼岸花が咲き誇り、収穫を間近に控えた田園には黄金色に染まった稲穂がたわわに実った頭を垂れている。
彼岸花の赤と黄金色の稲穂との鮮やかな色彩と、やや苔むした墓石とのコントラストをうまく切り取れたのではないかと思う。
特別審査員 駒澤たん道師より一言
「天上に咲く」といわれる沢山の曼殊沙華と秋の実り。
その中で静かな祈り。
“秋の彼岸”という言葉そのものの光景写真。
写真から詩が生まれます。
実はこの写真の他に二作品が印象的でした。
明るく賑やかな写真も素晴らしい。
一枚は都会の中の公園墓地。
並んだ墓に桜から散る花吹雪。
もう一枚は愛犬の墓。
共に人物は写っていないが、十分に祈る姿も詩も浮かびます。
説明不足ですが、このような写真を私は「いい写真」と言っています。
上手な写真を撮る人はプロ、アマチュアに多くいます。
だが、「いい写真」を撮る人は少ないと思っています。