応募写真77

柔らかな秋の日射しとあなたの手

ばあやんはとても働き者。
いつもばあやんは一人で墓石を磨き、花の水を替え、雑草を抜いてお墓をピカピカにしていた。
周りの親戚に指図することもなく、ただ本家の嫁として丁寧に、そして淡々とお墓を整えていた。
ばあやんは41才にして私を養子として迎えた。
そして私を大切に育ててくれた。
私が12才の時に養父が他界して、ずっと二人で暮らしてきたね。
人生の荒波を越えてきた同志だ。
手を握り「ありがとう。もう未練なくパパの所へ逝きなさい」。
柔らかな手の感触を心に焼きつけた。
ばあやん、貴女の宝物の孫たちは大きくなりましたよ。
そしてあの頃の貴女のように墓石を洗ってくれていますよ。
「文字の溝が汚れているから…」。
いつの間にか自分でブラシを買ってきて丹念に磨いていたよ。
あの日のように柔らかな秋の日射しの中で。

東京都 50代 女性