応募写真25
青空に映えた母
まだコロナウイルスが蔓延する前、父や先祖が眠るお墓に来た母を、同行した自分が撮影したものです。
真夏の昼、七十三の母とバスに揺られて霊園に着くと、お花とお線香を手にして、すっかり細くなった足を長い階段に一歩一歩のせていきます。
雑草を引き抜いた後、母は語りかけるようにお墓の上から柄杓で水をかけていく、その様子を私は父母の会話と思い、子どもながらに妙な気まずさと照れが胸に湧きました。
幼い頃から見慣れた景色だからでしょうか。
お墓参りは田舎に帰省したような懐かしさを感じます。
「私や子どもは元気ですよ、そちらはどうですか」という会話をしたあとに、苦労して上ってきた階段を、今度はゆるやかに母が下りていきます。
老々介護ののちに父を見送った、その苦労を感じさせない姿を見て、青空に映える背中だなぁ、と感じた思い出です。