応募写真94

 

富士のかなたへ

私の母は三年前の4月、桜満開の時期に91年の人生を全うしあの世へ旅立ちました。
昭和49年、当時45才の夫が急死し、その後約25年働きながら私たち姉妹を育ててくれたがんばり屋の母でした。
その間、苦労話や愚痴など言わず、勤め先でも周囲から信頼される存在だったのです。
私たちが社会人となって、自分が一人暮らしになっても、他人を頼ることなくまさに自立した人生を歩んできました。
晩年は緑あって、私の夫の赴任先静岡にて一人で住まいすることになりましたが、その自立した生活ぶりは変わりませんでした。

そんな母は、近隣での散歩や買い物で富士山の姿を見るのか楽しみでした。
四季折々の富士山の様子は、見る人に安らぎと元気を与えてくれます。
生前、母はこの静岡の地に来たことを大変喜んでいました。

私は、母が亡くなった4月から「お墓をどこに建てようか」と思い、市内の該当地を探した後、富士山が見える霊園を選択、12月にお墓が完成しました。
亡き母が好んだ富士山がいつも見ることができる敷地、墓の向きを考えて建立しました。
建立後、私たちが予想しなかった風景を発見したのです。
冬から初春にかけ晴れた日は、透き通った空にくっきりと『雪富士』が見えます。
角度を変えて少し斜めからそのお墓を見ると、その雪富士が映っているのです。
この景色は、亡き母やそして残された私たち子や孫にとって良き贈り物となりました。

これから子や孫が墓参りに来た時は、この「贈り物」の話をしようと思っています。